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まだぎこちなく坐つて伏目に固くなつている堂本の様子から、自分が誰かといふことは判つてはいるのだなと思つた房一は、
房一が道平を送つて行くことになつた。
今度は正文の方で答へなかつた。そして急に苦がい顔になつて、ぢろりと薬戸棚を見まはしただけで母屋おもやの方へ帰つて行つた。
房一はその晩留置されることを覚悟していたが、幸ひに取調べは簡単に済んで、夜ふけになつて神原喜作と共に自動車で帰つて来た。この二人が本署まで同行させられたことはあらゆる方面に同情をひき起した。そして翌日になると、出張所の側でも遺憾の意を表し事件は落着した。
「へえ。ちよつとばかし――」
「さあ、どうぞ。ずつとお通り下さい」
生返事をしてそのまゝ登つて行く。
と、房一が声をかけた。
控へ目に坐つて、注いだ茶碗を盆の上に揃へると、
「あら!」
日々は平凡に単調に過ぎて行つた。
「や、失礼、おさきに」
「いや、たいしたことはないだらう、と思ふ。鼻血を出したからね。軽いとは思ふんだがどうも老としよりだから経過しだいでは副次症を起さんともかぎらんしね。そのへんのことが僕にはよく判らないんだ」