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さう呟きながら、下手を眺めた。
「なんだね、クレーの射撃なんてものは昔はなかつたもんだが、こなひだの競馬は僕も見たけれども、子供の時以来十何年ぶりのわけだが、あれはちつとも変つていないね。優勝の景品が米俵だなんてね」
「さうですつてね」
盛子は妊娠していた。
「さつき、はじめは、はてな、見慣れない男がいるな、と思つたくらいですからな」
「うむ」
「何かの、いつたいあの山を掘つても引合ふのかな」
そこに、房一は、酒のために紅くなつてはいるが、そして、まだ額のあたりに筋張つた色が立つてはいるが、稍やゝ前こゞみになつた半白の頭を見た。それは河原町の人などには見られぬ線の粗あらさとどぎつさこそあつたが、想像したよりもはるかに老人だつた。
二人は自転車をひきずつたまゝ近よつた。
今泉は一寸いやな顔になりかけたが、
練吉は軽く頭を下げながら、相手の房一がいきなり直立不動のやうに足をそろへたのを見た。
相手はしばらく黙つていた。だが、場所が高いのと、柵の中にいるためか、落ちついて答へた。