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と、おづおづ答へた。
房一が云ひかけると
練吉はもうさつきから殆ど一人でぐいぐいやつているにもかゝはらず、むしろ青い顔だつた。
道平は納得したやうにうなづいたが、又ゆつくり身体を坐りなほすのと一緒に、
徳次は人の好い、いかにもさう信じこんだやうな眼で二人を眺めた。
「フム」
「さうです。相談があるからと云ふんで帰つて来たんですが、僕なんか何も問題はありませんよ。返すものがあれば、いつでも返します。何もないんですよ。家と、田地が少し。それも抵当に入つていますよ。僕がしたわけぢやない。兄貴が選挙の費用だの何だので金が要つたのでせう」
疲労したあまり不機嫌になつた大石練吉は、手荒く疳性かんしやうに衣裳をくるくると巻きながらいつもよりも激しくその切れ目をぱちぱちさせて云つた。
「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。
「あの、さきほど往診に出かけましたさうで」
だが、それがこの土地には縁がなく、遠い四国のことだと知ると同時に、彼の興味は消えてしまつた。彼は又、「あん」と小莫迦にした風に頭を下げて、わきへ行つてしまひかねない時の徳次にもどつていた。そして、今泉も話すべきことはもう話してしまつた。彼は次の聴手を探す必要がある。
「すると、何ですか、十年契約といふやうなことにでもなすつたんですか」
「これはあなたがお乗りになるので――?」